「メイション」「株式会社メイション」の悩みどころ

一見、客の気持ちなど店とは関係なさそうに映りますが、そうでもありません。
例外はあるとしても、店も何年か続けば「その店の色」というか、空気とでもいうものが自然にできてきて、客層はおのずと決まってくるのです。
不思議なもので、その店の色がそれに合ったお客を自然と集めるのです。
料理店としても、自分たちの色をお客様に表現するということが大切なのだと思います。
料理には、見たことも聞いたこともない、想像すらできないような食材が使われているわけではありません。
余程力のある料理人や魔法使いともなれば別の方法もあるのかもしれませんが、さほど代わり映えのしない情報の中で食材が選ばれている、それが東京の現状です。
そんな中でも、自分の記憶をたぐり寄せ「少しだけ注意深く食べてみる」ということで食材の質の違いがわかってくるし、見せかけや名前にだまされることなく料理を理解する楽しみも生まれてきます。
そして価格です。
巷ではコストパフォーマンスという言葉が定着しているようですが、日本語で言うところの「リーズナブル」という意味と捉えられているように思います。
品質からみてその価格が妥当なものかどうかを推し量るわけではなく、支払った額に対する満足度というより、むしろ「安い」か「高い」かに重点が置かれているのではないでしょうか。
そうは言っても、自分が払った金額に対しその料理が満足のいくものかどうかが決定的なのです。
それは、店の事情からすれば、どこにどれだけお金をかけ、あるいはどれだけもうけを出せるかなのですから、その店の経営方針がものを言うはずです。
また、満足度とは何かとなると、値段が安いか高いかということだけではなく、サービスや居心地の良し悪しはその時の気分や体調、その人の料理についての先入観や個七人の好き嫌いでも満足度は変わります。
本来、リーズナブルな価格については、内外装の程度や雰囲気のほか、料理人やサービスマンといった職人の技術力や使われる食材の質が評価の対象となるべきなのに、実際のところはそんな比較は行われずに、客の気分は氾濫する情報に流されているのではないでしょうか。
だいたいはこんなもので、わたしも「ヤリキレンなあ」とさびしい思いをしたことがいくたびかありました。
日本に輸入されている西洋食材に関していえば、これがわたしの正直な感想です。
ヨーロッパ滞在中に知り合った、多くの料理人からちょくちょく聞かされていたこととはいえ、こうまで違うとは逆に驚きでした。
わたしは、特に食に関して、ヨーロッパを、隈なくとは言わぬまでも、めぼしいところは回っているものですから、それらの西洋食材について、この世で最高とはいかなくとも、素晴らしい状態がどんなものなのかを理解しているつもりです。
たとえば、世界の三大珍味で有名なトリュフ。
ちなみにトリュフは、広葉樹の根に塊状の菌根をつくって共生する地下生のきのこです。
珍味だと捉えられているため、時に非常に高価になります。
トリュフはチェルカトーリーディータルトウーフィまたはトリフォラウとも呼ばれるトリュフ狩人が、雌豚か特別に訓練された犬を用いて探します。
現在は、トリュフを探し出しても食べてしまう上、重くてコントロールしにくい雌豚は嫌われ、しつけやすい犬を用いることを好みます。
どちらも鋭敏な嗅覚を持つ動物ですが、犬は香りを覚えさせる訓練が必要なのに対し、雌豚はまったくその必要がありません。
それはトリュフが放つ香りによるもので、それは雄豚のフェロモンと似ているからと言われています。
法律家にして政治家、特に『美味礼賛』を著した希代の食通ということで有名なフランス人、じゃンーアンテルムーブリア=サヅアランは「台所のダイヤモンド」とトリュフを称し、媚薬としての効能も賞賛しました。
このトリュフがどの種類のトリュフを指すのか。
また、彼の言う媚薬としての効果が人間に対しても有効かどうかは定かではありません。
ひと口にトリュフと言っても多様な種類があります。
収穫される時期や産出国、地域によっても色や香りが異なり、伝統的な使い方も変わります。
十一月から三月中旬ごろ産出されるトユペールーメラノスポルムーヴィッタデイーニという暗褐色をした黒トリュフが、洗練されたエレガントな香りとフランスでは謳われ、ペリゴール産が珍重されています。
しかしながらフランスの全トリュフ産出量の二十パーセントにも及びません。
こんなことから、イタリア産で、味も異なり香りも劣る別の種類のものがペリゴール産黒トリュフと偽って売られていたのがバレて騒ぎになった、という話をイタリア滞在中に聞かされました。
近頃はオーストラリアでも栽培に成功し、大きさ香りともに評判は上、です。
ヨーロッパに対して赤道を越えた反対側にあるため、日本に出回る季節が少、早い春先からというのも面白いと思います。
イタリアは、黒も白も産出しますが、黒トリュフはあまり好まず「フランスにでもくれてやれ」とばかりに輸出に回します。
彼らは北イタリアから中央イタリアにかけて産出される白トリュフを尊び、北イタリアのアルバ産白トリュフ、トユペールーマニャトウムーピコを最高としているのです。
フランスにおいては白トリュフが採れません。
黒トリュフに火まで通して珍重したがる、とイタリア人は馬鹿にします。
実際イタリア人は、限られたいくつかの伝統料理を除き、白トリュフに火を通す事を好まず、生のまま薄くスライスして、できるだけシンプルに食べることをよしとするのです。
白トリュフは日本にも輸入され、今や非常に高価だということで有名になっています。
十月から十二月ごろまで出回り、キロ単位の仕入れ価格にして四十万円から時には五十万円で取引されていました。
それが今年(二〇〇七年)はさらに、今までにないほど出来が悪かったことも手伝って品薄となり、キロ単価の仕入れ値で九十万円台まで値上がりしています。
一方、ユーロに変わる前までのイタリアでは、二十万円から二十五万円程で最高のものが取引されていました。
ちなみに最高のものは何かといえば、もちろんその特徴である新鮮な香りの出来不出来を主に指すわけですが、ほかにも形や大きさ、カビの有無を切らずに見分けることも含まれます。
大きければいいというわけではありません。
大きいものは二つ以上の塊が結合した奇形の可能性があり、結合した部分に隙間ができやすく、そこが湿りすぎることで申にカビが生えてしまうことがあるのです。
形の極端に悪いものも同様です。
一般的には、二十五グラム程度の重さで、形もコロンと丸く、へこみ具合がひどくないものをよしとしています。
これに対し黒トリュフは二十万円台前半止まりといったところですが、産出地域や天候などにより価格は大きく変わります。
日本では、よく知られていないことをいいことに、夏トリュフや冬トリュフと総称しているのを、たびたび見かけます。
皿の上で威張りくさって、しかし申し訳程度にちょこんと載っかっているだけで、高い支払いを請求されるあれです。
北イタリアのカネッリという小さな村に『サンーマルコ』というレストランがあります。
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